こんにちは、もいみです。
今日は昔話をひとつ。ちょっと長いです。
この会社では営業部に所属し、営業事務→営業支援という形で売上を最前線で追う部署にいますが、
今から30年ほど前、都立高校のデザイン科を経て広告デザイナーとして社会人生活をスタートさせました。
「Art Direction Japan」が「ADC年鑑」だった頃、広告デザイナーやコピーライター、
アドバタイジングの最盛期が垣間見えるその年鑑を何年分も読み漁っていたあの頃。
大手代理店と組んで広告を世に出していくようなカリスマ性のある社長のもとでデザイナーとして叩き込まれたのはその考え方と姿勢。
それはデザイナーという領域だけでなく生きていく上での私の指針でもあります。
少数精鋭の小さな会社だったので、新卒で入って2年もすれば大きなプロジェクト会議に参加し100ページを超えるカタログの撮影現場に入り、駅貼りポスターのデザインコンペに通った時にはクライアントと直で何週間も額を突き合わせたり。
とんでもなく大変な日々だったけれど、とんでもなく充実していました。
私たちが普段使う「デザイン」と「クリエイティブ」という言葉。
このふたつは似ているようで、本質的には異なる役割を持っていると考えます。
デザイン = 翻訳(目的や意図を整理し、形にすること)
クリエイティブ = 発明(ゼロから新しい価値を生み出すこと)
デザインは「既存の情報や意図を、最適な形で伝えること」が目的です。
例えば、ユーザーが直感的に使えるアプリ設計や、ブランドの魅力を伝える広告デザインがそれにあたり、いわば、「わかりやすく翻訳する作業」
一方で、クリエイティブは「今までになかった新しい概念や価値を生み出すこと」が目的で驚きや感動を生む広告表現や、まったく新しい商品コンセプトの発明などです。
では、優れたデザインやクリエイティブを実現するために必要なことは何でしょうか?
私は 「知ること」「体験すること」「色々なことに興味を持つこと」「面白がること」 が最も重要だと考えています。
① デザイン(翻訳)のためには、深い理解が必要
翻訳をするには、まず原文を理解する必要があります。それと同じように、デザインをするには、対象となるものの本質や、伝えたい相手のことを深く知ることが不可欠です。たとえば、ターゲットの心理や行動パターンを知らずにデザインを作ることはできません。
② クリエイティブ(発明)のためには、多様なインプットが必要
「ゼロから何かを生み出す」といっても、完全な無の状態からアイデアは生まれません。実は、新しい発明の多くは、異なる知識や経験が交差することで生まれます。スティーブ・ジョブズがカリグラフィーの知識を活かしてMacの美しいフォントを作ったように、多様なインプットがクリエイティブの源泉になります。
③ 色々なことに興味を持ち、面白がることが創造の原動力になる
知識や経験を得るだけでは、それを活かすことはできません。大切なのは、「なぜ?」「これって面白い!」と感じること。好奇心があれば、身の回りの何気ないものからでも学びを得ることができます。
「なぜこの広告は心に響くのか?」と考えてみる
「この街の雰囲気は何が作っているのか?」と感じてみる
「この食べ物の組み合わせは新しいな」と気づく
こうした興味や面白がる姿勢が、新しい発想を生む「種」になり、それがやがてデザインやクリエイティブに結びついていくんだと私は考えています。
Macや携帯で誰もがデザイナーのようになれる今だからこそ、職業人としてデザインとクリエイティブの本質を理解し、インプットの質を高めていくことで、より魅力的なアウトプットを生みだしていく必要がある。
職業としてはデザイナーを離れてもその界隈に住み続けてしまうのはやっぱり「面白い」と思い続けられるからなんだと思います。
面白い仕事を続けていきたいな。
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