text by 赤様
来年、日本で皆既日食が見られます。
日本の陸上で見られるのは、実に46年ぶりのことです。
皆既日食が見られる地帯を皆既帯と言いますが、
その皆既帯は、非常に狭い地域です。
その中心に最も近いのが、鹿児島の南に浮かぶ悪石島。
トカラ列島のなかに位置する、人口わずか80人の小さな島です。
その島が今、世界中から注目されています。
皆既とは、太陽が月の裏に完全に隠れることですが、
悪石島(あくせきじま)ではその時間がなんと6分25秒。
この長さは、皆既日食としては今世紀最大。
しかも、
太陽高度が高い(発生が午前11時ころ)、
梅雨が明けていることが予想されるため晴天が見込める、
空気の透明度が高い、
と、これだけ好条件が揃うのは世界でも珍しいのだそうです。
(台風銀座であることは、懸念材料だが・・・)
このため、世界中からの問合せは後を絶たず、
旅行会社の試算では2万人が訪問を希望しているのだそうです。
しかし、島の宿泊施設はたったの2件。収容人数もごくわずか。
来島者は、学校の体育館、校庭でテントでの宿泊をせざるを得ない状況。
ですが、問題は寝るところだけではありません。
島内で食事を提供する店は皆無。
電力や水は、住民の需要を満たすほどしかない。
実に、電力は25万キロワットの不足、
水にいたっては30トン(1日あたり)の不足が予想されています。
来島者は、シャワーすら浴びれないかもしれません。
ほかにも、滞在に必要なインフラ等の経費は来島者が負担。
島へのアクセスも、定期便は週2便の村営フェリーのみ。
このため鹿児島発着のツアーでも1週間以上と長く、
費用も10~20万にもなります。
この不景気で、減少する観光客に頭を悩ます地方も多いですが、
この島の住民は、いかにこの時期の生活を守るかが、
今一番の関心事なのです。
この日食は中央アジアから小笠原までの広い範囲で見られますが、
こんな状況は日本だけではないそうで、
中国のある島では、ドイツの観測団体がホテルごと買い取った、
なんて噂もあるほど、すでにヒートアップしています。
そんな人たちの悪戦苦闘なんぞ露知らず、
僕らは、この世紀の天体ショーをいかに楽しむべきか。
そんなことを考えていたら、
この日、7月22日は水曜日。
僕ら一般の社会人には、普通に仕事をする日です。
ちょっとガッカリですね。
東京では、皆既ではないですが、
74%も欠ける部分食が見られます。
時間は9:55から12:30まで。
意外に長い時間なので、
ちょっとくらい見れるチャンスがあるのではないでしょうか。
フイルムか黒い下敷きごしに見たり、
木の葉の影が、弧の形に変化していくのを見たり。
少年のころを思い出して、観察してみてください。
東京だけでなく、日本全国で、
その欠け具合の違いこそあれ、部分食が見られます。
南へ行けば行くほど、欠け具合は大きいので、
好条件を求めて旅立つのもいいでしょう。
もし、悪石島へ行きたい方がいたら、
11月26日より抽選の受付が始まっていますので、
応募してみてはいかがでしょうか。
ちなみにこれを逃すと、
日本では26年後の2035年までおあずけだそうなので、
みなさん、見逃さないように。
えっ、もし、雨が降ったらって?
そのときは、ニュースやドキュメントでガマンしてください。