text by 赤様
2025年の正月の話しである。
僕が運営に関わっているランニングの大会には、
多くのスピードランナーが
ペースメーカーとして来てくれる。
そのうちのひとりが、
箱根駅伝のエントリーメンバー16人に選ばれた。
だが、そのなかで実際に走れるのは10人。
でもどの区間を走るのか、
そもそも10人のなかに入れるのかはわからない。
箱根駅伝は、走る区間を数日前に一旦発表するが、
当日にはメンバーの変更が認められている。
僕は運営仲間と
「走ったら応援に行きたいよね!」
「でもホントに走れるのかわからないよ?」
と気をもんでいた。
数日前の発表時、
10人のなかに彼の名前は無かった。
僕らはガッカリしていたが、当日変更に希望を託した。
事情に詳しそうな人たちにさりげなく聞いてみた。
すると可能性があるのでは?という意見が聞けた。
真実味はわからないが、
とりあえず応援プランを考えることにした。
1日目の往路は、彼の名前は呼ばれなかった。
そして2日目の復路の朝。
当日変更の発表時刻はスタートの30分前。
僕はテレビを食い入るように見ていた。
そして他の選手に代わり彼が走ることが発表された。
その瞬間のドキドキは忘れられない。
すぐに応援したい人は集まれ!と告知した。
それが7:30。
集合場所には僕を含め14人の仲間が集まった。
その時が11:30。
たった4時間で、これだけ多くの仲間が来たことに驚いた。
それは彼を応援したいというみんなの気持ちの現れだった。
数十分後、
大声で叫ぶ僕らの前を彼は走り抜けた。
通り過ぎる時間はたったの数秒。
でも彼のこれまでの歩みにほんの少しでも触れているから、
僕らにはその数秒がとてつもない価値だった。
箱根駅伝の沿道は、
そんな思いの詰まった応援で溢れているのだ。

