Qです。
3月下旬、DIC川村記念美術館を訪れました。
実はこの美術館、今年3月末をもって閉館し、
今後は六本木にて小規模な施設として
再出発することが発表されています。
白鳥が憩う池を眺める広大な庭と
所蔵する作品のために建築された建築物。
そしてその中での鑑賞体験。
展示を見るよろこび以上に
空間に癒される場でもありました。
ただ、それらの価値を支えていたのは、
日々の維持管理にかかる膨大なコストです。
今後は所蔵品のおよそ4分の3を売却し、
配当に回す方針だとのこと。
最後の展示会に記されていた言葉には、
美術品に真摯に向き合ってきた姿勢と、
それゆえの悔しさがにじみ出ていて、
胸に訴えてくる思いがありました。
昨今では、文化的価値を次代に受け継いでいくために
国立博物館ですらクラウドファンディングに頼る時代です。
美術館での企画展は収益を出せるモネとゴッホだらけ。
つまらない、と感じることもありますが
「文化を守る」理想と、「持続させるための」現実。
これは、美術館に限らず、さまざまな分野に共通する課題なのだと思います。
経済社会において低くみられがちな文化的価値を
どう残していくかは、理解と共感が重要となります。
そしてそのためには、理想を語るだけでなく、
経済的にも成立させる努力と発信力が求められる時代。
それができる時代でもあります。
DIC川村記念美術館の閉館は、
ひとつの時代の終わりなのかもしれません。
六本木はこれまでよりもずっと小さなスペースになるそうです。
それでも、また新たなかたちで癒しの場になることを願っていつつ。
私自身、この理想と現実について問い続けたいと思います。