テレビのなかの時間

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text by 赤様

「短い時間で、サッと自分の意見が言える人ばかりが
テレビに出るようになっている。
そうじゃなくて、ちゃんと演技ができる人が残っていかないと」
あるベテラン俳優がこんなことを言っていた。

満載な情報。心地よいしゃべりのテンポ。
インタビューでも、プロモーションでも、トーク番組でも、
軽快にしゃべれる人がもてはやされるテレビの世界。

でも、役者の本分は演じること。しゃべることではない。
だが、そこは人気商売ゆえの辛さ。
注目されなければ淘汰されてしまうこともありうるだろう。
ゆっくり考え、訥々(とつとつ)としゃべる余裕は、
残念ながら今のテレビには無い。

でも、そういう役者が羨ましがるコーナーが以前あった。
もう終わってしまったが、NEWS23での名物コーナーだった「多事争論」。
筑紫哲也が90秒も自分の意見をしゃべるコーナーだった。
こんな長い時間をひとりでしゃべるというのはありえないことで、
テレビの常識というのは、せいぜい30秒くらいなのだそうだ。
(このコーナーは台本がないことでも、業界的には珍しいそうだ)

ある意味、その時間を上手く使っているのは政治家だろう。
たとえば、ニュース番組にゲストで呼ばれてのインタビュー。
生放送には「それでは時間になりました」的なことが多いが、
賢い政治家はそれを上手く利用し、
痛い部分をつかれると、さりげなくかわし時間を使うことを知っている。
番組の制作者は、それをどう思っているのだろう。

時間が無いゆえに編み出したことなのか、
芸能人がテレビ番組に出るときに、
それはそれは凄い量のアンケートを書かされるのだそうだ。
最近の出来事、番組のテーマに関係するエピソード、
他の出演者との交友録などなど。

制作者は、番組の展開をそのアンケートに基づいて構成する。
だから、芸能人はそのために書き方を工夫する人も多いとか。
いろいろな番組に出演する人は、その作業だけでうんざりなのだそうだ。

番組の制作者や、司会者が
出演者のことを下調べする手間を埋め合わせるためには、
これは仕方がないと割り切るしかないのかもしれない。

でも、又聞きのような、うすっぺらなコメントになることは避けられないし、
芸人の笑いで逃げることも、よく見かける光景だ。
それはそれで面白いかもしれないが、その場凌ぎ以外の何者でもない。

そう考えるとA-studioという番組はよくできている、
と言うのは、ある構成作家の意見だ。
うざったいアンケートを無くして、司会者自らが取材に行くだけあり、
そこを注意して見ると、他の番組とは全然違う厚みがあるのがわかる。

30分の番組でも、民放だと正味時間は23~24分ほど。
そのなかで、制作者の試行錯誤が垣間見える番組は、
見終わって、単に「あ~面白かった」だけではなく、
どこか心に引っかかるものがある。

僕も、毎週、何本も録画しては、週末にまとめて見るテレビっ子だ。
だから同じ時間を過ごすなら、そんな見応えのある番組を楽しみたい。

テレビは決して視聴率のためだけのものではない。
これだけ数々の番組があるのだから、
時間と手間をかけた深みのある番組が、もっとあってもいいと思う。

コメント(1)

> テレビは決して視聴率のためだけのものではない。

その通りだと思います。

テレビの役割を再考する必要があるんじゃないかと思います。

だから、ボクは以前ほとんど見なかったNHKが、今は好きです。

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このページは、cmemberが2010年3月26日 09:00に書いたブログ記事です。

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