text by 赤様
「ピッチ、キャッチ、内野、外野、ヘッタクソ!」「ピッチャー、ビビッテル! ヘイッヘイッ!」なんて相手チームに言ってた「上星川団地」をあとにして、小学校5年生で横浜市戸塚区(後に泉区になる)の新興住宅街に引っ越しました。そこは出来たばかりの町で地域にはチームはなく、でも放課後や休日は毎日のように野球、野球。そうこうしているうちに僕らの地区にもチームが出来るとの知らせが届きます。
チーム名は投票で決まりました。「いずみ野ビーバーズ」。ここで念願のレギュラーを獲得! 僕は足は速かったのですがクラスでは指折りのチビッコ。そんなチョコチョコすばしっこいヤツがクラスに一人はいたと思うのですが、まさにそんなヤツ。成長期は未だだったので非力。最もデカいヤツとは30cm以上の差がありました。で、打順は1番か2番か7番。守備はレフトかセンターかファースト(ファーストは体格的には筋違いなんだけどね)。
練習嫌いは相変わらずで、立花コーチのノックはめちゃくちゃキビシかった。エラーしてもキビシかったが、声が出ていないとよりキビシかった。大の長嶋ファンだった立花コーチは、ノックの時に「いくぞーっ!」と気合を入れる。「オーッ!」と返すと、「王じゃない、長嶋だーっ!」と言いながら強烈な打球を打ってくる。それも取れるか取れないかギリギリのところに。この取れるか取れないかというのがミソで、体育会系出身者なら経験があるだろうが、取れない打球なら選手は追わない、容易く取れれば練習にならないので、そのギリギリのところを狙ってくる。まさに鬼コーチ。
さて記念すべきチーム初めての試合。相手は「並木谷戸」。僕らのチームは初めて試合を経験する者ばかり。みんないつもと表情が違う。で、案の定一方的な相手のペースに。あわや完全試合か、というほど見事なまでに抑えこまれます。結果は10対0の5回コールド負け。「並木谷戸」のエースは石川君。その時は、隣の小学校に通っている見ず知らずの人でしたが、こともあろうに中学で同じクラスになろうとは・・・。中学では、ことあるごとにその試合のことを揶揄されました。
そのときのライバルチームは「グリーン・ファイタース」、「並木谷戸」、「いずみ野コスモス」、「日向山シャークス」、「和泉台」。はっきり言うと僕らのチームだけが弱かった。新しいチームだからしょうがないのだが、頑張れレッドビッキーズ状態だった。「上星川団地」のときのような応援もなかった。だから部活とかでよくある「声出せよ!」的掛け声。だからかもしれないが、「日向山シャークス」の応援は最も印象に残っている。リズム感がよく楽しい応援だった。文章ではうまくリズム感が伝えられないが紹介しよう。たとえばバッターがナガシマ選手のとき(Aはリーダー役、Bはその他全員)、
A「バーッチ野球の天才!」
B「天才!」
A「天才バッター」
B「ナガシマ」
A「バッター、バッター、バッター、バッター、ホームランバッター」
B「ナガシマ」
A「バッター、バッター、バッター、バッター、ホームランバッター」
B「ナガシマ」
A「バッター、ホームラン」
B「ホームラン」
A「ホームランバッター」
B「ナ・ガ・シ・マ」
A「一発かましたれっ!」※
B「ヘイヘイヘイッ!」
A「一発かましたれっ!」
B「ヘイヘイヘイッ!」
A「かましたれっ!」
B「ヘイッ」
A「かましたれっ!」
B「ヘイッ!」
A「一発かましたれっ!」
B「ヘイヘイヘイッ!」※
以下、※〜※の繰り返し。
この応援は衝撃的でした。今でも耳にこびりついて忘れられない。僕のチームの応援ではなかったのですが、小学校を卒業したあとも、中学、高校の球技大会や草野球などでも使ってしまいました。この応援は結構盛り上がること請け合いです。子供の試合の時にどうでしょう? お父さん!
応援道
応援の奥深さと小学生のバカっぽさがいい感じです。
赤さま…この路線をちょっと極めてみてはいかがでしょう。職場篇・家庭篇なんてのを是非…。
あの家は「よく声が出てる」なんて言われたい今日この頃です。
「よく声が出る」家庭。
積水ハウスとか、住宅メーカーのコピーみたい。
でも子供のバカっぽさって、いいですよね。それは物事への一途さや、楽しもうとする気持ちだったりするんだけど、そういうのは、歳を重ねても忘れずにいたいですね。