トマソンのすすめ(通勤時の密かな楽しみ) by こじこじ

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「考現学」をご存知だろうか。

考現学とは、古いものを考察する学問「考古学」に対して、新しいもの、今の、現在のものに目を向けた学問のことだ。学問とはいっても、考古学ののようなアカデミックな香りはあまり感じられない。もともと今和次郎(こんわじろう)という東京美術学校(現・東京芸大)の図案科出身の人で、後にあの民俗学者、柳田国男らと農村の調査を行った。早稲田の教授であったが、震災後荒れ果てた東京の中からバラックの様子を見て「バラック装飾社」や「考現学」を始めた。さらにその視点は服飾や風俗、生活から家政にまで及んで、身近なものに目を向けたものとなった。

近年ではその考現学を発展させたもので面白いものが出てきている。
「路上観察」「トマソン(いわゆる無用の長物のこと)」などの一見どうでも良いようなものに目を向けた人たちがいた。建築家の藤森氏や赤瀬川源平という人たちだ。「トマソン」とは元々読売の助っ人外国人だった選手の名前だが、芳しくない成績だったため居ても意味がない、役に立たないということでトマソンとなったそうだ。
その対象物は、例えばこんなもの。
上って降りるだけの階段(「純粋階段」)、塀に作られた郵便受けの穴がふさがれた後に残る庇(無用庇)など。つまり、今となっては使いようが無くて無用の長物となっているがなぜかそのたたずまいが変で、それに郷愁や哀愁が感じられるものだ。
そもそも対象物の制作者にとっては芸術ではないが、観察者が発見することで芸術作品になるという特異性によって、「超芸術」と認識される。

私も会社の近辺でいくつか目にしたことがあるが、下町に行くとさらにその目撃頻度は高くなるだろう。
通勤経路において、この目の向け方によっては、退屈な時間が楽しい時間に変わるだろう。通い慣れた経路でも、日々変化があるはずで、拘ってみると意外に楽しいものだ。定点観察などもこの面白さとつながると思う。さがしてみると意外と身近にあるので、何気ない日常の通勤路でも良いからたまには目を向けてみよう。とんでもない大発見があるかも知れないですぞ。

参考サイト

トマソン・リンク
http://www.st.rim.or.jp/~tokyo/thomalink/

トマソン・トーキョー
http://www.st.rim.or.jp/~tokyo/thomason/

コメント(3)

「トマソン」て面白いですね。
そんな考え方もあるんだなって。。。
でも上って降りるだけの階段(「純粋階段」)てトマソンなんですか?
階段の存在理由て上って下りるだけで十分にあると思うんだけど・・・
なまいき言ってトマソンあ、スンマソン

コメントさん、こんにちは。

> でも上って降りるだけの階段(「純粋階段」)てトマソンなんですか?
> 階段の存在理由て上って下りるだけで十分にあると思うんだけど・・・

本当はそうなんですよね。階段だってことは当然上りがあって、下りがある。
ところが、幾多の変遷を経て、今のような上がって下るだけの階段になっちまった。
昔はその中間に出入り口があったんだろうな、という郷愁を感じてしまいますね。
まさにこの境地に持っていってくれるものこそ、「トマソン」な訳でして。
階段に罪はないのよ。罪は。

赤瀬川原平、南伸坊、林丈二などが所属している路上観察学会は以前から知ってます。各氏がそれらの書物を出版していて、書店で何度も拝見しました。
でもこれは、書物で見るより自分で街に出て探し回った方が格段に面白い。今度出かけたときは、デジカメでいろいろ撮ってこようと思っています。

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このページは、cforceが2005年11月28日 09:10に書いたブログ記事です。

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