text by 赤様
遺産と言ってもお金の話しではありません。
僕と父親とは特に仲がいいというわけでもなく、
むしろあまり口を利かない時期もあるくらいでした。
でも葬儀のとき、
叔父(父親の弟)と話しているうちに、
いろんな文化をもらっていたことに気がつきました。
父親はエンジニアで、
もっぱら理数系的な考え方をするタイプでした。
あまり感覚的なことは言わず、
言動も理屈が多く哲学的。
子どもの頃は
それがあまり好きではありませんでした。
でも、知的好奇心の面では、
様々なポジティブ要素がありました。
夏休みの自由研究に何をすればいいか、
と相談したとき、
「ラジオでも作ってみるか」と言われ、
小さなキットを買ってきて、
トランジスタやスピーカーなどをハンダ付けして、
作りました。
学校に持っていくと、
小学生の宿題としては目を引くものがあったようで、
小さなラジオはたちまち人気アイテムになりました。
オーディオが趣味で、
そんな人たちが聴く音楽は、
なぜかクラシックやジャズなのですが、
僕の好みがテレビで流れる流行りの音楽よりも、
そちらの方がしっくりくるのは、
明らかに影響されていたのだと思います。
パソコンも早くから家庭に持ち込まれました。
カセットテープに記録されたプログラムを
パソコンに都度都度読み込ませてたり、
雑誌に出ているプログラムを入力したりして、
起動させるような時代でした。
ボタンを押せばパッとできる横着な手段ではなく、
材料を少しずつ組み立てていく道のりの先に、
様々な可能性が隠れていることを見せたかったのでしょうか。
そんな、
新しいものや複雑なものなどから感じる好奇心のタネを、
植え付けてくれたのかもしれません。
そこまでビジョンがあるようには感じなかったので、
こちらの勝手な想像かもしれませんが、
なんか、そういうことにしておいた方が
おもしろいかな、と考えています。
もちろん父親だけでなく、
母親からもらった文化もあるわけですが、
子どもというのは、
そうやって親の影響を受けていくものなのだなと、
回想する今日この頃です。