老若男女が舞い踊る。
雷鳴のような和太鼓、優美な線を描く扇子、うごめく巨大な龍。
近所に住む気の置けない友人と公園をぶらぶらしていたとき、
野外ステージで踊る人々と突如遭遇した。
この光景は、在住する区で最も大きな祭りの一つ、
実在したお姫さまにちなんだお祭りのものであった。
目の前で繰り広げられていたのは、その公開リハーサルだった。
「堂々と踊ってッ!!!」
牧歌的なBGMが無慈悲にぶつ切れ
演出家と思われる人物の指示が響く。
全く知らなかったが30年以上続いている祭りらしいので
入念な準備がなされているのであろう、
若草の頃のうららかな晴天の下、張り詰める空気。
リハーサルが進むにつれ、
事務的だった鬨の声に気迫が宿る。一糸乱れぬ舞となる。
出演者の小学生は待ち時間にすかさずswitchもこなす。
それぞれが本番に向けて、ハイパフォーマンスを見せていた。
「失敗しても笑ってればいいからッ!!!!」
演出家と思われる人物から金言が飛び出した。
それを聞いて、主人公のお姫さま役の方の固かった表情もニッコリ。
もはや関係者かと言えるほど、
出演者の方々を手に汗握り見守っていた友人と私も、
「いいこというやん」とニッコリ。
この祭りの礎となったお姫さまは、乱世に翻弄された悲運のお姫さまだったらしい。
姫の心中いかばかりか、しかしきっとお姫さまもニッコリ。