text by 赤様
住職が書いたダイエット本・・・・・・「一日一膳」
妊婦が書いたミステリー小説・・・・・・「父親は誰だ!」
レントゲン技師が出した写真集・・・・・・「黒い影」
営業マンが書いた官能小説・・・・・・「リップサービス」
人事部長が書いた青春小説・・・・・・「遠くへ飛ばせ!」
エレベーターガールが残した遺作・・・・・・「上へまいります」
中年男が書いたホラー小説・・・・・・「妻が笑った・・・」
これは、自費出版を扱う、ある企業のCMコピーです。
(もしこんな人が本を書いたら、という設定で「 」内が本のタイトルです)
録画した番組がたまっていたので、
僕は正月にそれらをたっぷりと見ていました。
そのなかで、数年前にやっていた番組のCMだったのがこれでした。
確かに、ちょっとオヤジギャグ的なところは否めませんが、
なかなか面白い発想だと思います。
自費出版というと、
普通の人には、なかなか馴染みがないものです。
「あなたの本を作る」と言えば聞こえはいいですが、
それでは何のおもしろ味もない。
そこをどう印象づけるのか。
おそらく、このCMの制作過程では、かなり試行錯誤をしたことでしょう。
柔軟に考えて、常識を取っ払ったからこそ、
この面白さがあると思います。
このCMの終わりは、
「すべての人を作家にしたい」
という言葉で締めくくられています。
冒頭のオヤジギャグ的な文言が、
この言葉によって、ギャグだけではない、まっすぐさを醸しだし、
CM全体がひとつのパッケージとして、ビシッと引き締まります。
あまり認知度のない事柄をどう広告するか、
という点においても、興味深いものでした。
さて、CMのコピーと言えば、
僕が去年みたもののなかで、最も印象に残っているものが、
「カルカン」というペットフードのCMです。
たまには、無意味なことをしてみる
自分の気持ちよさを、まず優先する
自分の能力に限界を決めない
キミが、おしえてくれること
このCMに登場する猫は、
ティッシュの箱から一心不乱にティッシュを掻き出したり、
温かい炊飯ジャーの上で居眠りをしたり、
人間の背丈よりもはるかに高い棚に飛び移ったりと、
本能の赴くままに、好き勝手な行動をしています。
でも、そんな行動が、
普段、僕らが忘れかけていることに気づかせてくれる。
このCMはそこに着目しているのだと思います。
猫の無邪気で、嘘の無い行動をみていると、
学ばせてくれることがあります。
猫に限らず、子どもや、他の動物の行動からも、
同様のことが言えると思います。
僕ら大人のカッチカチになった頭脳では思いもよらなかったことを、
彼らは、躊躇すらせず、平然とやってのけたりします。
前例とか、経験とか、常識とは、いったい何なのでしょうか?
自分を縛っているのは、もしかしたら自分自身なのではないでしょうか?
まるで、そう言われているようです。
「言うは易く行なうは難し」ではありますが、
だからこそ、そこから脱するためにも、
より柔らかく考えていきたいものですね。