text and photo by 赤様
***写真は現在の寺田屋***
時は1866年1月23日(現在の暦で3月8日)、
坂本竜馬が襲撃された。
俗に言う「寺田屋騒動」というやつである。
京都、伏見にある寺田屋という船宿に泊まっていた竜馬を、何者かが襲撃。
後に妻となるお竜がいち早く不穏な空気を察知し、
竜馬は左手に傷を負ったものの建物の裏から逃げることができ、難を逃れたという事件だ。
京都で観光というと、自社仏閣を連想するが、
ここは京都では珍しく人間味を感じさせる施設だ。
と言っても、現存する建物は当時のものではなく、
鳥羽・伏見の戦いで消失された後に、その西側に再建されたもの。
竜馬の過ごした江戸時代後期、
大阪から京都に入るには、
淀川を通る船に乗るのが一般的なルートで、その終点が伏見だった。
船業者は船着場に休憩所を兼ねた宿を持ち、
利用者は船が来るまで、または降りたあとに、
その宿で泊まる者も多かったそうだ。
数ある船宿のなかで、竜馬が常宿としていたのがこの寺田屋だ。
今は、昼は展示を主とした観光施設だが、夜は泊まることもできる。
一時、この建物が当時のものか偽物かという論議が起こったが、
僕が思うに、これが本物かどうかということよりも、
竜馬ゆかりの展示物や、その施設に出入りする人間模様を、
歴史的背景になぞらえてみるだけでも、面白い施設だ。
10人ほどの見学者が集まると、
案内人が当時の様子をリアルに説明してくれる。
「竜馬が○○した・・・」「中岡慎太郎が○○した・・・」
なんて説明をされると、
竜馬ファンならずとも、好奇心をくすぐられる。
歴史小説やドラマでは触れることのできない彼の痕跡をたどり、
当時の様子に思いを馳せてみるのもいいだろう。
「世に生を得るは事を成すにあり」
「業なかばで倒れてもよい。そのときは目標の方角にむかい、その姿勢で倒れよ」
(龍馬談)
その魅力的な人物像や、高い志しに対して、
彼を敬い、惹かれる者は後を絶たない。
それは、価値観や目標は違っても、志しを高く持つことの大切さを、
彼の生き方が教えてくれるからだろう。
京都の旅に、なにかアクセントをつけたいと思うのなら、
ぜひともここはオススメの場所である。