text by 赤様
率直に言って、こんなに楽しいとは思わなかった。
何度もマラソン大会に出ているけど、
走る前まで「東京マラソン」の印象はそれほど良くなかったからだ。
マラソン大会は、レース中のランナーの荷物を預かってもらえるが、
その荷物の大きさに制限があったり、
協賛スポンサーのキャンペーン合戦が行き過ぎている感じがしたからだ。
***スタート数分前***
でも走ってみると、
東京の真ん中でやる大会だけに、沿道の観衆がモノ凄く多くて、
ボランティアの数も半端じゃなかった。
僕が今まで出た大会と比べると雲泥の差。
しかも、みんなこっちを向いて注目してくれる。
ホントに多くの人たちに「乗せられて」走った、と言ってもよいくらいだ。
猿の着ぐるみを着て応援していた学生。
♪YMCAの曲を大音響で流しならが踊ってるグループ。
歌舞伎町の交差点では、東京六大学の応援部が
合同チームを組んで応援してくれた。
給水所や沿道に立つボランティアも、温かい声が絶えなかった。
人がいないところを走ると、
景色を眺めたり、くだらないことを考えたりして、
距離感や時間感覚が長く感じるが、
この声援のおかげで、そんなことは全く感じなかった。
走るのが好きな僕でも、これは初めての経験だった。
そんな多くの観衆も、
各々の身内や不特定多数のランナーへの応援とはわかってはいるものの、
注目されると、なんだか恥ずかしいやら、こそばゆいやら。
いつの間にか顔がニヤけてくる。
こんな大勢の観衆の前で走ったことはなかったが、
これはホント気持ちいい。
すがすがしい青空が、その高揚感に輪をかける。
よくオリンピックとかで完走した選手が、
「沿道の声援が力になりました」って言うけど、
それを常套句のように聞き流してしまう。
でもこんなに力になるのだと初めて知った。
沿道の外国人老夫婦がランナーひとり一人とハイタッチをしていた。
僕も調子に乗って、その老夫婦とハイタッチ。
テンションはどんどんあがってくる。
また、沿道以外にも僕らを盛り上げてくれた素晴らしい走友がいた。
外国人ランナーは「フォーーーー」という奇声をあげ、周囲は爆笑。
沿道の人とハイタッチしながら、数100mを激走して、
逆に沿道の人を盛り上げてみせた。
有名人が一緒に走っているのも、高揚感のアクセントになった。
彼らは、カメラマンや音声さんなどで5人くらいの集団を形成していた。
最初に見たのは「ズームイン!」の羽鳥慎一アナウンサー。
写真を撮りながら走ろうと携帯を持っていたので、パチリ。
羽鳥アナを追い抜いてしばらく後には、
鈴江奈々アナウンサー(「NEWS ZERO」担当)と古市幸子アナウンサーもいた。
携帯を構えると、鈴江アナはVサインをしてくれた。
***走りながらなのでブレてしまいました***
その前には
タレントの川田広樹や、
勝俣州和とカンニング竹山がいた。
他にもピングーの着ぐるみを着た人。
背中に「コシヒカリ」と書かれたのぼりをつけた人。
自国の国旗をマントのように羽織る外国人。
スタート地点では、東国原知事が通りがかりざわめきが起こる。
僕も「頑張れ!」と言って手を伸ばすと握手することができた。
みんなそれぞれ自分のペースで走っているので、
同じ方向に走っていても、
いろんな人(ときには有名人)に出会うことができる。
そして、それぞれの地点でいろんな感情を共有する。
しかもおまけに、頼んでもいないのに、赤の他人の僕らを応援してくれる。
そういうイベントって、あんまりないよね。
見てるよりも走るほうが絶対に楽しい。
そう思える東京マラソンでした。