text by 赤様
Brave Blossoms 直訳すると「勇敢な桜」。
この桜とは、ラグビー日本代表チームのこと。
ユニフォームの胸に桜のエンブレムがついているからだ。
日本代表が世界と戦うとき、
体格で劣る日本は、ディフェンスを強固にして、
少ないチャンスから勝機を見いだすしかない。
今、ラグビーのトップ諸国は、身長2m、体重100kgの大男が、100mを11秒で走る。
それが「世界」なのだ。
フランスで行われているラグビーワールドカップ。
25日、日本はカナダとのグループリーグ最終戦を戦った。
日本は世界ランク18位。14位のカナダは格上だが、対戦成績は日本の9勝8敗。
実力はほぼ互角だが、平均身長で6センチほどカナダの方がデカい。
日本は、いつものように必死のディフェンスで大男の突進を凌ぐ。
その鍛え抜かれた低く鋭いタックルの連続は、
一見、ディフェンス一辺倒で、劣性のように見える。
しかし、それが日本のペースだ。
そのタックルはボディーブローのように、徐々にカナダに効き始める。
その数110回。
他の国と比較にならないほどの多さだ。
その健気さ、勇敢さが、本物のラグビーを知るフランスの観客の心を動かす。
スタジアムは次第に手拍子が起こり、ウェーブが始まり、
フランス語で「ジャポン、ジャポン」の大合唱が巻き起こった。
前回、2003年のワールドカップでは、
その勇敢なタックルを駆使してのディフェンスで、
世界から「Brave Blossoms」という愛称を与えられた。
それほど、一目置かれているのだ。
そしてこの試合のロスタイム。
終了間際にドラマは待っていた。
7点差でカナダのリード。
1トライ、1コンバージョンで追いつく点差だ。
しかし、次に反則で試合が止まれば、試合終了を告げるホイッスルがなるかもしれない。
日本はゴール前わずかのところで、必死の攻撃を試みる。
しかしカナダも必死の守り。
何度も攻めては、何度も跳ね返された。
でも諦めなかった。
もう時間がない。無理か・・・
と思われるところで、カナダのディフェンスの隙をつき、
日本はようやくトライをあげた。
そのあとのコンバージョンも成功し同点。
その瞬間に試合終了のホイッスルが鳴った。
スタジアムには大歓声が沸き起こり、
同時に、まるで優勝したかのような日本選手の歓喜の輪ができた。
そんな劇的な状況に、放送するアナウンサー、解説者とも涙声になったほどだ。
スタジアムのスタンディングオーベーションは、かなかな鳴りやまなかった。
実に見事な桜だった。