text by 赤様
うちの両親は、70を超えているにもかかわらず、
スマホを使っている。
母親は「必要な機能しか使わないけどね」と笑って言う。
でも、誰でも自分に必要なことにしか使わないのだから、
どんなに機能が充実していても、それで十分だと思う。
そう。そんなにスマホに頼るべきではない、と思ったのは、
その話しの続きのこと。
「道がわからないときは、スマホで調べられるから便利だしね」
と言うと、どうやら地図アプリの使い方はわからないらしい。
すると、
「道なんか聞けばいいのよ」
そうだ。そうなのだ。
その言葉は痛烈だった。
以前は、道を聞けば、
例え見知らぬ者にでも答えてくれる文化や人情があった。
もっと社会全体に体温があったのだ。
でも今はどうだろう。
他人とのかかわりが殺伐としてきている気がする。
非人道的な事件が多くなってきたのも、
これと無縁ではないと思う。
震災のあと「絆」なんて言葉が出まわったが、
そんな身の周りのことを大事にしないと、
絵に描いた餅である。
こういう比較はおかしいかもしれないけど、
検索がスムーズにできる社会と、
困っている赤の他人に協力してくれる社会と、
どちらがいいですか?
今はなんでもスマホで検索できる。
でも以前は、頼ったり頼られたりという社会が、
確実に存在した。
便利になることは喜ばしいことだが、
暮らしやすい社会というのはそういうものなのだろうか。
なくしてはいけないものを今一度考えるべき時期にきていると、
僕は思う。