text by 赤様
さて、京都のことを書くのも、今回で10回目となります。
今日は、京都で僕の最もお気に入りの場所、
比叡山の延暦寺を紹介します。
僕がこのお寺に興味を持ったきっかけは、
ある灯篭の灯りの存在を知ったからでした。
延暦寺の本堂である根本中堂と言われる建物。
そこの本尊の前の灯篭の灯りがそれなんですが、
「不滅の法灯」と呼ばれています。
その灯りは、なんと1200年もの間、
ずっと灯し続けられているのだそうです。
すごいですよね。
なんだかロマンを感じさせます。
実際には、直接その灯りを目にすることはできず、
灯篭ごしにその灯りを見るのですが、
厳かな薄暗い本堂のなかに光る灯篭を見ていると、
凄みを感じずにはいられません。
伝統とは、本来「伝燈」と書いたそうです。
燈火(ともしび)を伝えるから伝燈と言うのだと。
そして「油断」というのは、
その燈火の油を断ってしまうくらいに
注意を怠るから油断と言うのだと。
これらの言葉は、
この不滅の法灯からきていると言われています。
お坊さんは、
「仏教を伝えるには、努力が欠かせない。
この努力とは火に油を注ぐことと同じ。
この油が絶えることが油断すること。
常に努力して伝えなければならない。
それは仏教だけではなく、すべてに言えること」
と言います。
そして、この油を継ぎ足す人、
なんと、係りがいないのだそうです。
これもお坊さん曰く、
「係りがいる方があぶない。
いると誰かがやるだろうと思ってしまうから。
そうではなく、みんなが注視するようにしなくてはいけない」と。
1200年。
そんな長さ、僕には全く考えられません。
仏教とか、お寺とかという括りは関係なく、
そんなに長いあいだ、灯っている炎があるという事実が、
本当に大事なことはなんだろうと考えさせてくれます。
自分の価値観やこれからのことに対して、
見つめ直すのにはちょうどいい静寂と落ち着きがここにはあります。
ここは、そんな貴重なところです。