本当のことが知りたいんでしょう?

text by 赤様

「本当のことが知りたいんでしょう?」
この言葉が、僕はとても印象に残っている。

山中教授がノーベル賞を受賞することが決まり、
それに関連する番組をいくつか見た。

山中教授のもとで実験をしている研究員が、
あるとき、ひとつの実験に対して、
仮説通りにいかなかったことにうなだれていた。
山中教授は、その研究員に対して、
冒頭の言葉で励ましたのだそうだ。

何かを発見するというのは、
途方も無い可能性のなかから、
ひとつひとつ地道に絞り込んでいく作業だ。
故に、謎を解明するのには膨大な時間と労力がかかる。

僕らの身体には、
約60兆もの細胞、約2万もの遺伝子がある。

研究の成果により、
人間の身体のいろいろなことがわかってきていて、
様々な病気の解明に繋がっているが、
まだまだ未知な部分が多い。

僕は仕事で、ある論文誌の制作にかかわっているが、
論文には、その研究を完成させるために、
他者の研究を多く引用する。

他者の研究の成果を自分の研究の裏づけに用いるのは、
研究者のあいだでは当たり前で、
そう考えると、古今東西の研究者の誰もがネットワークの一員であり、
お互いに研究結果を利用しあっている。

山中教授は、そのことを、
「研究は何百年も続く長いリレーだ」と言ったが、
それは、あたかも研究者たちが世界全体で、
自然科学という壮大テーマを解明しようとしているようなものだ。

そんな大きな事に立ち向かっているのだから、
紆余曲折、七転八倒はつきもので、
目の前のその実験が失敗に終わることも多い。

でも、仮説が当たった、はずれたではなく、
大事なのは、本当のことがわかることだ。
仮説がはずれたことは失敗ではなく、
ひとつの可能性が減り、真実に近づいたと考えるべきだろう。

そう、失敗は、考え方によっては失敗ではなくなるのだ。
そしてそれは、
目的をもってやったことに無駄なことなど無いのだとも言える。
日々、本当のことの探究に真摯に向き合う研究者に、
そういうことを教えてもらった気がした。

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このページは、cmemberが2012年11月 9日 08:45に書いたブログ記事です。

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