思い入れのあるものは値切るな

text by 赤様

厳しい経済情勢のなか、
ふと、こんなことを思い出しました。
あるドキュメント番組で、
高級マグロの仲買人がこう語っていました。
「値切って安く買うおうとすると、苦労して良いものを提供しようとする人が
だんだん少なくなってしまう。だから私は値切らない」のだと。

僕らの生活を見渡してみて、どうでしょう?
食べ物、好きな本、音楽、洋服、インテリア・・・
自分の思い入れのあるものというのは、
どことなく手がこんでいたり、情熱が感じられるものです。
そう、やはり良いものを提供するには、
それ相当の手間暇が必要なのです。

どんな分野でも同じでしょうが、
ものを作っていることに関わっている以上、
経済的な面と、ものづくりへのこだわりとは、
永遠のジレンマなのかもしれません。

この不況の昨今、
安売りや値下げの文字が、僕らの目にいやおうなく飛び込んできます。
生産コストが下がるのは、需要と供給の両面からみても嬉しいことですが、
反面、それに費やされる時間や労力はネガティブなこととして捉えられ、
削られてゆくことを良しとする流れが、今、この世を支配しています。

古くからある伝統工芸が衰えていくのも、
同じことが理由のひとつになっていることは容易に想像がつき、
悲しいかぎりです。

であるならば、
せめて作り手の傍らにでも身を置く人間なら、
自らが思い入れのあるものくらいは、
適正と思われる対価を払おうじゃありませんか。

確かにサイフの中身は木枯らしが吹いています。
でも、フトコロぐあいを気にするあまり、
良いものを作り出す人たちの環境を悪化させてしまうと、
その商品が、その文化が、
消え失せてしまうことにもなりかねません。

ちょっと大げさかもしれませんが、
でも一方で、厳しい状況のなか、必死に闘っている人たちは、
僕らの想像よりもずっと多いのだと思うのです。

安いマグロばかりが店に並び、
旨いマグロを提供する人の生活が成り立たなくなったら、
あるいは、ある伝統工芸を継ぐ人がいなくなったら、
その産業や文化は廃れてしまいます。

思い入れのあるものが、
次々と衰退していく世の中にだけはなって欲しくない。
僕たちの生活の潤いである、そういうものが無くなってしまったら、
豊かさっていったい何なのでしょう?

低価格は大いに喜ばしいことです。
でも、その後ろには、必ずそれを生業としている作り手がいます。
もしあなたがクリエイターなら、
もしあなたがものづくりに少しでも関わっているのなら、
そのことも気にして、ものを買うべきだと僕は思うのです。

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このブログ記事について

このページは、cforceが2009年12月11日 09:00に書いたブログ記事です。

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