text by 赤様
「明日の神話」という作品がある。
岡本太郎が1968年にメキシコで描いたものだ。
完成後、行方不明になっていたが、30数年経った2003年に発見された。
その後、輸送、修復を経て公開されるまでの模様がドキュメントで放送され、
また2006年に汐留、2007年から東京都現代美術館で公開されていたので、
ご存知の方も多いだろう。
原爆が炸裂する瞬間を描いたと言われるその作品は、
縦5.5m×横30mの巨大なものだ。
大きさもさることながら、
容赦ない迫力と抑えきれない生命力がビシビシと伝わってきて、
圧倒的な存在感がある。
彼の満ち溢れるエネルギーが、まさに「爆発」しているようだ。
生前からの思いだった「だれもがいつでも見られる」場所を求め、
井の頭線渋谷駅改札からJR線改札に向かう通路に恒久展示が決まり、
11月17日から飾られている。
正直なことを言うと、
僕は前述のドキュメントを見て、この作品のことを知ってはいたが、
ここに展示されているとは知らなかった。
偶然通りかかり、周りの人が携帯をかざしているのをみて、
振り向いたら、「あっ、あれだ!」と気付いたのだ。
マスコミによると、ここを通る人は1日30万人と言われる。
だがこの日は、あまりに無頓着に通り過ぎる人の多さが気になった。
我が生活のために奔走する都会人の心理はわかる。
通勤経路で、毎日目にしている人の気持ちも理解できる。
しかし、何事もないように流れ行く人ゴミを見ると、
もう少し、気に留めてみてもいいんじゃないか、という気持ちになってくる。
僕は、美術館によく足を運ぶわけでもない。
岡本太郎という人間は、わりと興味がある方だが、
でも、何を語れる者でもない。
しかし、彼の作品を見ると、
心の中に何か揺り動かされるモノが湧き上がってくる。
それはきっと、僕だけではないだろうと思う。
渋谷を訪れた際には、ぜひ一度ご覧いただきたいと思うものである。
3点とも携帯で撮影したので、画質はご勘弁を・・・