text by 赤様
帰るために着替えようと、自分のロッカーへ戻ったら、
服が消えていた。
そこには着るには恥ずかしい衣装がおいてあった。
そんなとき、あなたならどうする?
ボストン・レッドソックスの松坂大輔が、着ぐるみを着て飛行機に乗り込んだ。
イギリスの子供向け番組「テレタビーズ」のキャラクターだ。
数年前、ヤンキースの松井秀喜がヒョウ柄のコートに、
イチローはウエイトレスに扮した。
ある日、試合を終えた選手がロッカーに戻ると、
新人選手のロッカーから、私服がいっさい無くなっている。
そこにあるのは、恥ずかしい衣装だけ。
新人選手は、他に着るものがないので、
それを着て飛行機に乗り込む。
次の試合が行われる街のホテルに着くまで、脱ぐことは許されない。
しかも、飛行機に乗ると、同僚との記念撮影が始まったり、
普段ホテルに横付けされるバスが、
ファンに姿をさらすために遠くに止まったりするのだ。
これがメジャーリーグでは、新人選手に対しての儀式になっている。
マスコミは、この日を「ルーキー・ラギング・デー」と呼ぶ。
単なる先輩選手のいたずらなのだが、
しかし、それが「いつ」なのかは誰にも知らされない。
突然その日がやってくるのだ。
練りに練られた凝ったいたずらなのだ。
松坂はこの日、カナダの入国審査で、この格好でモジモジしていたそうだ。
メジャーリーガーは実に愉快だ。
でも、メジャーに挑戦した日本人選手は揃ってそれを「嬉しい」と口にする。
それは、変装が好きだからではなく、
憧れていたメジャーの一員として、
他の選手から受け入れられたと感じるからだそうだ。
だから、みんな面白がって衣装を着て飛行機に乗り込んでいく。
単調な生活を嘆いているあなた。
会社帰りに着ぐるみを着て帰ってはどうだろう?