黒人より速い日本人

~世界陸上まで、あと23日!~

text by 赤様(大阪世界陸上を勝手に盛り上げよう委員会会長)


長く陸上競技を観てきたが、そんな光景を観たのは初めてだった。

短距離種目で、日本人が黒人選手の前を走る。しかも、かろうじてではなく、余裕シャクシャクで。2003年の世界陸上パリ大会。男子200mに出場した末續慎吾は、僕らが想像したこともなかったことをやってのけた。日本人が黒人の前を走ることなんて出来るのか。いや、そんなことは起こりえないと決め付けてきた。それが・・・。

200mは、一次予選、二次予選、準決勝、決勝と4度のレースを経て競う形式だ。メダルを狙う世界のトップ選手は、準決勝までの3度のレースは、他を引き離しながらも力を使わずに余裕の走りをする。本気で走るのは決勝だけなのである。しかし、彼らが手を抜く一次や二次予選であれ、日本人が彼らの前を走ることは今までまず無かった。ときどき互角に競うことがあるにはあったが、前に出てもそれはいつも僅差だった。

それがこのときの末續は、素晴らしかった。一次、二次予選では、同じ組で走る他のランナーの先頭に立って走った。しかも追ってくるランナーがいないかと、後ろを確認するほどの余裕があった。自分を追い越そうとする者がいないとわかると、ゴールする前からスピードを緩めたほどだ。

これは、今まで日本人が黒人などの世界トップレベルの選手にずっとやられてきた光景だった。陸上競技をしていた日本人にとっては、如何ともしがたい屈辱であった。こんなことを、逆に日本人がやり返したいと願ってはいても、実現不可能なことだと思っていた。それを末續はやってくれたのである。

黒人の前を余裕の表情で走るその姿はホントに痛快だった。いや、凄過ぎてTVの前で鳥肌がたつくらい興奮した。準決勝は2位でゴールするものの、ゴール直前、優勝候補筆頭の選手が、末續に対して、明らかにライバル心むき出しの表情を見せた。そんなに意識されること自体も今まで無かったことだ。

結果的に、その世界陸上で末續は銅メダルを獲得した。有望な黒人選手を何人も退けてである。末續はその直前の日本選手権で20秒03という自己最高の記録を出している。実は今年の末續は、そのときと同じように好調だ。先日行われた今年の日本選手権では20秒20と自己2番目の好記録を出しているのである。その例でいくと、また今年も想像もしないことをやってくれるかもしれない。

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このブログ記事について

このページは、cforceが2007年8月 2日 09:00に書いたブログ記事です。

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