ヒッチハイク

text by 赤様

もう10ウン年くらい前の夏の話し。
北海道、羊蹄山の麓に倶知安(くっちゃん)という町がある。
観光でそこを訪れたときのこと。
僕は駅から路線バスに乗って目的地に向った。
でも、帰るときになって、ちょうどいい時間帯にバスがなかった。
時刻表を見ると、1日10本くらいしか書いてない。
やられたぁーと思った。
旅行をするとき、交通機関を都会と同じ感覚で利用してはいけないのだ。
ちょっと考えて駅まで歩こうと決めた。
往きにバスに乗ったとき、そんなに遠いとは感じなかったからだ。

でも実際歩き出すと結構距離があるもので、乗り物の凄さが身に染みてくる。
だんだん疲れてきて、追い越していく車に対して、
『誰か乗っけてくれないかな・・・』なんてちょっと思い始めてくる。
そのうち、その思いが次第に大きくなってきて
じゃぁ、試しに手を上げてみようと親指を突き立ててみた。
すると最初はダメ元で上げてたのが、だんだんそれに頼りたくなってきて、
本気になってアピールし始める。
でも、車は僕の横を軽やかに通り過ぎるばかり。
途中からはムキになってきてかなり長い間手をあげていた。
するとやっとのことで止まってくれた車があった。
地元のおじさんが運転するバンだった。
嬉しかったー。ありがたかったー。
真夏の炎天下、駅まで10分ほど乗せてもらった。
クーラーがヤケに心地良かった。


それから数年後の春。
茨城の奥の方に行ったとき。
駅から目的地までは道が蛇行して遠回りだった。
地図を見ると、最短ルートで線路が通っているのでそこを歩いた。
田舎の電車はなかなか来ないのだ。
スタンドバイミーのように鉄橋を渡ったりもした。
長さ100mくらい、高さ20mくらいの鉄橋で、かなり恐かった。
でも帰りは、遠回りしてふつうの道を歩いた。
日が傾いてくると灯りのない線路はちょっと危ないと思ったからだ。

道を歩いていると、前述の北海道のことを思い出した。
で、こんどは気楽な気持ちで手を上げてみた。
そうしたら幸運なことに最初に通りがかった車が止まってくれた。
それがなんと、ライトが縦に並んだベージュ色のベンツだった。
『ヒッチハイクでベンツに乗れるぜ!』と思ったら、
中からおじさんが顔を出した。
農協の帽子をかぶった茨城なまりの人の良さそうなおじさんだった。
農協の帽子かぶってベンツ・・・。
ベンツの乗り心地はもう忘れてしまったが、
そのアンバランスな組み合わせは、今でも強く印象に残っている。

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このブログ記事について

このページは、cforceが2007年3月29日 09:00に書いたブログ記事です。

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