text by 赤様
今年のJリーグの全日程が終了した。
最後に行われたのが入替戦だ。
これはJ1の16位のチームとJ2の3位のチームが試合をして、
来年J1で戦う権利を争うものだ。
12月6日と9日にその試合が行われた。
今年の対戦はJ1のアビスパ福岡とJ2のヴィッセル神戸。
神戸は去年J2に降格し、この試合で1年でのJ1復帰を目指す。
対する福岡は、去年J1にようやく昇格したが
1年で入替戦を戦うハメになった。
そこには、単純にどちらのチームを応援するということではなく、
数々の運命の糸がいくつもかくされていた。
この試合の指揮を執るのは、
福岡の監督、川勝良一と神戸の監督、松田浩。
福岡の川勝は、今年6月から監督を務めるが、
川勝の前に福岡の監督だったのが実は松田浩。
松田は2003年に当時J2だった福岡の監督に就くと、
3年がかりでチームを建て直し、J1へチームを導いた。
しかしJ1では思うような成績が残せず今年6月に解任され、
その後神戸の監督に就任した。
でもそれ以前にはこんなこともあった。
松田は2002年8月にも神戸の監督を務めたことがある。
そのときは、川勝が成績不振を理由に解任された後の出来事だった。
両チームの監督が、ともに相手チームの監督経験を持つ。
しかも、互いが互いの成績不振のために監督を引き継いでいる。
この試合を向える2人の心境はいったいどんなものだったのだろうか。
松田は福岡を分析する時に、何度もつらい気持ちになったそうだ。
この試合は神戸が勝利し、
松田は、J2のチームを2度J1に昇格させた初めての監督になった。
また監督だけではなく選手の方をみても、
福岡には去年神戸に在籍した選手が3人もいた。
選手が入れ替わるには違うワケがある。
チームがJ1に昇格しても、
対戦相手のレベルに合わせるためだったり、
またチームの収入が増えるために、
より実力がある選手を補強したりする。
選手にとっては、チームのために昇格に貢献しても、
他の選手の加入によって解雇されたりもする。
そして次に契約するチームがJ2のチームで、
来年の今ごろまた入替戦を戦ってるなんてこともある。
逆に、チームがJ1からJ2に落ちてしまっても、
J1の実力と認められてる選手は、
J1の他のチームへの移籍を了承してもらえる場合が多い。
チームの収入源が減ることや、その選手の将来を考えて、
クラブ側から話しが出ることがほとんどだ。
だがあえて、J2に落ちるチームでのプレーを選んだ選手もいる。
三浦淳宏。
当時日本代表だった彼の移籍をフロントも容認していたが、
J2降格に責任を感じていた彼は、その道を拒み自らJ2行きを選んだ。
しかしそのことで、
自らの目標だったワールドカップ出場の夢は絶たれてしまった。
アジア予選の真っ最中、
彼が選手を鼓舞して日本代表が甦ったのは有名な話だが、
その熱い思いを捨てて、彼は神戸のために戦った。
「筋が通っていないことは大嫌い」なのだ。
サッカーが出来る喜び。サッカーにかかわれる喜び。
そしてそれを支えてくれる人、指示してくれる人がいること。
そういう原点を忘れるべきではないと教えさせられた。
人生何が起きるかわからない。
思い通りにいかないときは、原点に戻る。
乗り越えるための一番の近道だ。