text by 赤様
サッカーに「オートマチズム」という言葉がある。
どんなことかと言うと、
誰かがある行動を起こしたときに、
言葉を交わさなくても他の人が同じ意志の元に連携して動く。
それがあたかも自動的に動いているように見えることだ。
たとえば中田がボールを奪ったら、
それと同時に三都主がサイドを駆け上がり、
稲本がそのカバーをして、
中村俊輔が中田からパスがもらえる位置に動き、
高原が敵のディフェンダーのマークを振り切って
シュートできるところに動く。
これらのことを、以心伝心のようにできることだ。
現代サッカーでは、
これが出来ないチームはまともな勝負ができないほど、
今や必要不可欠な手段だ。
だからこそ、
それをチームに植えつけるのは大変な作業だ。
オシムが監督になってまだ3ヶ月。
これは、そんな短期間で築けるほど単純なものではない。
親友と呼べる相手にだって
「あいつのとる行動は、だいたいわかる」
と言えるまでに相当の年月がかかるだろう。
それと同じことだ。
先日、日本代表の試合後の記者会見で、
記者とオシム監督とのあいだでこんなやりとりがあった。
記 者「今日の日本代表のオートマチズムはどうでしたか?」
オシム「私は妻と結婚して40年になるが、
未だに妻との間にオートマチズムはない。
なのにどうやって、3ヶ月で選手間でそれをつくるんですか?」
お笑いのオートマチズムは、
すでに記者と監督とのあいだで結実しつつあるようだ。