今回はまたまたバリ島シリーズ第2弾。
といってもお気に入りの風景であるが、色の話。
バリ島に行ったことのある方なら、直感的にお分かりいただけると思うが、バリ島は南国(熱帯)ゆえに色のはっきりした光景が多い。その実例を紹介しよう。
Photo1
先週も紹介したレゴンダンスの写真だ。この衣装は宮廷内の侍女の役柄で用いられるもので、かなり強烈なピンクである。いや、ピンクというよりマゼンタに近いかも知れない。衣装の細部に目を向ければ効果的に金が使われている。この衣装は芸能のみで使用されるもので一般の伝統的な民族衣装ではない。
Photo2
これも芸能用の衣装。先のレゴンと違うのは、宗教儀礼に必要な奉納芸の際に着る衣装だ。このような子供達が寺院で舞踊を奉納するのだが、これは「ルジャン」といわれて、踊ること自体に意味がある。これにもやはり金が効果的・印象的な使い方になっている。金以外の色では黄色が意味がり、前回でも書いたが、黄色はバリ島では純白と並んでハレの日の重要な意味を持つ色になっているのだそうだ。
Photo3
これはガムランの楽器群。複雑な装飾はアラベスクが多く、木をレリーフ状または透かし彫りに加工したものに金を塗っている。赤も効果的に使われている。鍵盤状の青銅部も磨きだすと金色に輝く。
Photo4
この山車のようなものは実はお葬式のときのものだ。バリ島の葬式は日本と比べるとかなり大がかりにやることが多い。亡くなってすぐに葬式を済ませることは、一部の裕福な層のみで、普通の家では合同葬のようなカタチで規模を大きくして行われる場合が多い。ここでも黄色が重要な色としてかなり使用されている。
Photo5
自然に目を向けてみよう。一般の家庭では家の敷地にはこのような緑が多く存在する。実際、滞在中はこのグリーンという色が本当に目を休めるのに効果的だと実感できる。植物の色はヒトに優しいのだそうである。もちろん動物にも。
Photo6
夕日。黄昏。たそがれというが、これは「誰ぞ彼」から来ていて、人の顔が判別できないほど暗い状態を言うのだそうである。この色には人を悲しくさせる効果があるそうだ。話は逸れるが、夕日の綺麗な湖岸の別荘は入水者が多いという都市伝説じみた話もある。
バリ島にはオダランと言ってバリヒンドゥーによる寺院のお祭りがある。しかもその寺院も、「先祖を祭る寺」、「村の起源を祝った寺」、そして「死者ための寺」の三つがある。それらがバリの暦の一年(210日)周期でそれぞれに巡ってくるから、一年中どこかでオダランが行われている。それに加えて、人が生まれて死ぬまでの通過儀礼においても「ウパチャラ」といって儀式を執り行う。だからバリはお祭り漬けなのだ。その時に色も重要な意味を持っていて、街や村も人々の作り出す色(服や儀式の飾り物)でいっぱいになる。私は、バリ島に行くまでは考えられなかったような色の組み合わせがあちこちで見られることに驚いた。例えば、紫と黄色の強烈な組み合わせ。ショッキングピンクと白の組み合わせ。赤と金。数えたらキリがないほどだ。これに熱帯独特の濃い色の自然の色。曖昧な色などどこにもない。デザイナーという職業柄、私にとってこの色の世界はカルチャーショックだった。そんな色の組み合わせが合うはずがないと、勝手に信じ込んでいた自分の「常識」が覆ったときだった。
デザイナーは、とりわけ若いデザイナーほど、見識を広めることは重要だ。
井の中の蛙で終わる事なかれ、だ。
私は、人生において色々な体験をするほど、固定概念が無くなっていくのだと思うし(人が丸くなるともいえるかな?)、そして何より色を自在に操ることは、デザインを施したものを使う人、あるいは見る人の気持ちまで操ることができると言うことだ。色はデザインする者にとって重要な要素であることを忘れないでおきたい。