text by 赤様
桜を見ていて、
ある染織家が話していたことを思い出した。
桜の木の枝を煮出して染料をとり、それで糸を染めると、
桜の花びらの色に染まるのだと。
幹や枝からとったのに、
花の色になるという、この不思議。
幹だけをみても、
花のあの美しさも、花びらの色も、
想像なんてできない。
でも、花が咲く、咲かない以前に、
きっと美しさが幹に内包されているのだろう。
それはまるで、
内面がきれいじゃないと、美しい花は咲かないのだと、
桜に言われているようで、ちょっとドキっとした。
桜が美しいのはなぜなのだろう。
春になると、そんなことを毎年考える。
僕が至った結論は、
「上を向かせるため」なんじゃないかと思う。
春は日本では節目の季節。
希望の季節なんて言われ方もする。
そう。人生を歩くには、希望が必要だ。
その新しい門出に希望を持たせるために、
人の頭上で爛漫と咲き誇り、
「さあ、上を向こう」と、
促してくれているのだと思う。
人の意識を上向かせる桜からのエール。
そんな思いを意気に感じ、
僕らは、自らの人生をどんな色に染めていこうと思うのだろう。