text by 赤様
僕はCMが好きで、番組を見ているときも、
CMは休憩時間ではなく、楽しみな時間のひとつだ。
短い時間で独自の世界観を描くCMは、ひとつの芸術だと思う。
広告批評のような雑誌も出ていれば、世界各国でコンクールがあったりもする。
ストーリーや意外な比喩の仕方。
それぞれにメッセージがこめられて見ていて飽きない。
で、今注目しているひとつを紹介すると、それはセコムのCM。
ある家庭の番犬が主人公だ。
見たこともない方のために説明すると・・・
庭で飼われている番犬が、
日の当たる芝生に背中をスリスリしたり、
雨で濡れた身体をブルブルっとしたりと
日常が綴られている。
ときには、近所の子供が遊びに来て喜んだり、
家の前を通る通行人を不審に思ったり、
郵便配達など見知らぬ訪問者におびえたりする。
それだけでは、何のインパクトもないのだが、
このCMのポイントは、その犬を人間が演じているところ。
発する声も「ワン」ではなくて「誰?」と吠え続ける。
そして「番犬にも静かな暮らしを」のコピーで終わる。
僕は犬はかなり好きな動物だ。
しかし、犬を飼ったこともないし、犬の気持ちなんて想像したこともない。
他人の家の番犬が、僕に向って吠えると、
威嚇しているようにいつも思っていたのだが、
これを見て以来、違う思いがあるのでは、
などと想像するようになってしまった。
ユーモアで着色しているとはいえ、
そう思ってしまうだけでも、このCMプランナーの勝利と言えるだろう。
そんな世界観を見せられると、
「CMだから、ちょっとトイレに・・・」という心境にはなれないのである。