text by 赤様
先日まで行われていたワールドベースボールクラシック(WBC)。日本はキューバとの接戦を制し見事に優勝! その決勝戦の試合終盤に粋な演出があった。
決勝戦が行われたのは、アメリカ、サンディエゴのペトコパークという野球場。日本の抑えのピッチャー大塚昌則が、去年まで2年間在籍していたメジャーリーグの球団、サンディエゴ・パドレスのホームグラウンドだ。
メジャーリーグでも日本でも、抑えの切り札がマウンドに登るとき、そのチームの選手やファンはほぼ勝利を確信している。いわばオオトリを務めるその状況で出てくるピッチャーは、ファンの立場からすれば、「待ってました」という心境。そこで期待に応えていれば、尊敬の念と絶対の信頼を得ることになる。
だから、そのピッチャーが登場する様は、球団や球場関係者からすればヒーローの登場に値する。当然、その場を盛り上げる企画がどの球場でも行われる。サンディエゴでのそれは品格ある重厚な鐘の音と勇ましい音楽が球場全体を盛り上げるのだ。
8回裏にその場面がおとずれた。日本のピッチャーに大塚がコールされると、メジャーリーグの試合ではないにもかかわらず、その鐘の音と音楽が流れた。しかも、大塚は今年からテキサスの違うチームへの移籍が決まっているのに、である。
その演出は、「いままで僕らのためにありがとう」と語っているかのように僕には聞こえた。たとえ違うチームに行ってしまっても、君は僕らのヒーローだったんだ、という感謝とねぎらいの声に。